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ファイバーレーザのビーム径を算出したい!

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ファイバーレーザのビーム径を算出したい!

ビーム径の算出方法

 レーザ加工においてデフォーカス(インフォーカスまたはアウトフォーカス)しているお客様より、参考のビーム径を知りたい、レーザ光が周りの装置や治具に干渉しないか確認するためにレーザの光軸を知りたいといったお声をよくいただきまます。
 
 また、パワメータ(もしくはパワープローブ)を使って、レーザの出力測定をする際はデフォーカスして行います。使用するパワーメータの損傷閾値はパワー密度で記されており、そのパワー密度を計算するためにビーム径の情報が必要になります。
※出力測定の方法はこちら
 
 そんな時のために今回はビーム径の算出方法をご紹介します。 また、要望のビーム径があり、そのビーム径を得るための距離を知りたい場合もこの方法で算出可能です。


ジャストフォーカス時のビーム径(またはスポット径)

 ジャストフォーカス時のビーム径(またはスポット径)は、下記の計算式で算出できます。算出に必要な数値は発振器と加工ヘッドの検査成績書や仕様書を参照してください。
※マルチモード発振器の場合のみになります。
※本数値は理論上の数値であって、1/e2での算出となりますので、ご留意ください。

【計算式】
スポット径 =「発振器のファイバーコア径」 × (フォーカシングレンズf値 / コリメーションレンズf値)

例題. ファイバーコア径:φ0.2mm コリメーションレンズ f値: 50mm フォーカシングレンズ f値:200mmの時のスポット径は?
※単位が同じ「mm」であることを確認してください。

スポット径 = 0.2 × (200 / 50) = φ0.8 mm

よって、φ0.8mmがスポット径になります。

インフォーカス・アウトフォーカス時のビーム径

【手順1】 インフォーカス・アウトフォーカス時のビーム径を算出するために下記の数値を取得してください。
<マルチモード発振器>

<シングルモード発振器>
*1 : 発振器メーカによって、レーザの拡がり角度の表記方法が「半角」の場合や「全角」の場合があります。検査成績書に明記が無い場合、メーカへ問い合わせください。

【手順2】下記の赤字の計算式を使って、ビーム径を算出できます。また、要望のビーム径を得るための焦点からの距離や加工ヘッドからの距離も下記の計算式で算出できます。
※本数値は理論上の数値であって、1/e2での算出となりますので、ご留意ください。

インフォーカス時のビーム径

① (マルチモード発振器の場合) レーザの拡がり角度を算出します。
※シングルモード発振器の場合、すでに数値が分かっていますので、②から開始してください。

【レーザの拡がり角度:θ1 (mrad)】
根拠計算式: BPP (mm×mrad) = θ1×(ファイバーコア径(mm) /2)  ⇒  θ1= BPP / (コア径/2)

② θ1を数値を使って、集光角度(θ2)を算出します。

【集光角度: θ2 (mrad)】
根拠計算式: fc (mm)/ff (mm) = θ2/θ1 ⇒ θ2= (fc/ff) * θ1

③ θ2の数値を使って、ビーム径(d)や要望のビーム径を得るための焦点からの距離(L2)を算出します。

【ビーム径:d (mm)】 d = tan(θ2/1000) * L2 * 2
【焦点からの距離:L2 (mm)】 L2=d / (tan(θ2/1000) * 2)

では、実際に下記の仕様の場合のビーム径または焦点からの距離を求めてみましょう。

例題①: 焦点からの距離が50mmの場合のビーム径を知りたい。

<発振器の仕様>ファイバーコア径: φ0.2mm BPP: 5 mm×mrad
<加工ヘッドの仕様> コリメーションレンズ: 50mm フォーカシングレンズ: 250mm
注1: BPPの数値があるので、マルチモード発振器になります。手順①から計算しましょう!
注2: 単位が同じ「mm」であることを確認しよう。

① θ1= BPP / (コア径/2)  ⇒ θ1 = 5 / (0.2/2) = 50 mrad
② θ2= (fc/ff) * θ1  ⇒ θ2 = (50 / 250)* 50 = 10 mrad
③ d = tan(θ2/1000) * L2 * 2 ⇒ d = tan(10/1000) * 50 * 2 = φ1 mm

よって、焦点からの距離が50mmの場合のビーム径はφ1mmになります。

例題②: ビーム径φ0.5mmが得られる焦点からの距離が知りたい。

<発振器の仕様>レーザの拡がり角度: 25 mrad
<加工ヘッドの仕様>コリメーションレンズ: 100mm フォーカシングレンズ: 200mm
注1: ファイバーコア径及びBPPの数値がないため、シングルモード発振器になります。発振器の検査成績書を確認して、「半角」の数値になっているかを確認しましょう。確認できたら、手順②から計算しましょう!
注2: 単位が同じ「mm」であることを確認しよう。

①θ1= BPP / (コア径/2) ⇒ θ1= 25 mrad のため、計算不要!
②θ2= (fc/ff) * θ1  ⇒ θ2 = (100 / 200)* 25 = 12.5 mrad
③L2=d / (tan(θ2/1000) * 2) ⇒ L2= 0.5 / (tan(12.5/1000) * 2) = 20 mm

よって、ビーム径がφ0.5mmが得られる焦点からの距離は20mmになります。

アウトフォーカス時のビーム径

 アウトフォーカスの場合もインフォーカス時と同じレーザの拡がり角度になります。そのため、ジャストフォーカス時のワーキングディスタンスの数値があれば、同じようにビーム径と要望のビーム径を得るための距離の算出が可能です。

では、下記の仕様の場合のビーム径または距離を求めてみましょう。

例題③: ビーム径φ30mmが得られる保護ガラスホルダからの距離が知りたい。

<発振器の仕様> ファイバーコア径: φ0.1mm BPP: 4 mm×mrad
<加工ヘッドの仕様> コリメーションレンズ: 125mm フォーカシングレンズ: 250mm
ジャストフォーカス時のワーキングディスタンス: 234.4 mm
※図面や加工ヘッドの検査成績書に記載があります。今回のジャストフォーカス時のワーキングディスタンスは保護ガラスホルダ以下からの距離となります。(下記の参考図面参照)
注1: BPPの数値があるので、マルチモード発振器になります。手順①から計算しましょう!
注2: 単位が同じ「mm」であることを確認しよう。

① θ1= BPP / (コア径/2)   ⇒ θ1 = 4 / (0.1 / 2) = 80 mard
② θ2= (fc/ff) * θ1       ⇒ θ2 = (125 / 250)* 80 = 40 mrad
③ L2=d / (tan(θ2/1000) * 2) ⇒ L2= 30 / (tan(40/1000) * 2) = 374.8 mm
④ ビーム径φ30mmであるときの焦点からの距離 ⇒ 374.8 + 234.4 = 609.2mm

よって、ビーム径φ30mmを得るための保護ガラスホルダ以下から距離は、609.2mmになります。



例題④: 保護ガラスホルダからの距離が320mmの場合のビーム径を知りたい。

<発振器の仕様> ファイバーコア径:φ0.2mm BPP: 8 mm×mrad
<加工ヘッドの仕様> コリメーションレンズ: 100mm フォーカシングレンズ: 200mm
ジャストフォーカス時のワーキングディスタンス: 186mm
※ワーキングディスタンスは図面や加工ヘッドの検査成績書に記載があります。今回のジャストフォーカス時のワーキングディスタンスは、保護ガラスホルダ以下からの距離となります。(下記の参考図面参照)


上記の図のように134mm (320mm – 186mm)の時のビーム径を求めれば、良いことになります。
注1: BPPの数値があるので、マルチモード発振器になります。手順①から計算しましょう!
注2: 単位が同じ「mm」であることを確認しよう。

① θ1= BPP / (コア径/2)   ⇒ θ1 = 8 / (0.2 / 2) = 80 mard
② θ2= (fc/ff) * θ1       ⇒ θ2 = (100 / 200) * 80 = 40 mrad
③ d = tan(θ2/1000) * L2 * 2 ⇒ d= tan(40/1000) * 134 * 2 = φ10.7 mm

よって、保護ガラスホルダからの距離が320mmの時のビーム径は、φ10.7mmになります。



 ビーム径や距離の計算方法はお分かりなりましたでしょうか?
その他、ご質問等ございましたら、お気軽に下記よりお問い合わせください。





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