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【レーザックス現場レポートシリーズ『レザルポ!』Vol.2】レーザの相棒?それともライバル?電子ビーム加工 とは?

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【レーザックス現場レポートシリーズ『レザルポ!』Vol.2】レーザの相棒?それともライバル?電子ビーム加工 とは?

“電子ビーム加工” それはレーザ加工と同じ“高エネルギービーム加工”の一種!

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レーザックスと言えば、会社名の通りレーザ加工の会社だ!というイメージがありますよね?大正解!
しかし、それだけではないのがレーザックスなのです。レーザックスでは、レーザ加工はもちろんですが
同じ「高エネルギービーム加工」が可能である電子ビーム加工機も2台保有し、電子ビームを用いた溶接加工も請け負っております。

今回は、そんなレーザックスの電子ビーム加工機の現場より『レザルポ!』第2弾をお届けします!
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『レザルポ!』シリーズ第1弾記事はコチラ☟
【レーザックス現場レポートシリーズ『レザルポ!』】金属パイプの高速溶接のご紹介!

そもそも電子ビーム加工って何?という方へ
過去記事(レーザックス通信2023年5月号配信)はコチラ!☟
レーザ屋が語ります!レーザ屋で出来ます!レーザ溶接と双璧を成す電子ビーム溶接!

◆何故レーザ加工屋が電子ビーム加工もやっているの?
 それは、幅広い素材や加工方法を理解した上で柔軟に対応する為である!

ところで、レーザックスはレーザ加工屋なのに、何故電子ビーム加工もやっているのでしょうか?
レーザ加工も電子ビーム加工も、同じ高エネルギービーム加工ではありますが、加工原理は全く違います。
まずはそれぞれの加工原理と特徴についておさらいしましょう!
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レーザ加工、電子ビーム加工それぞれ加工原理で大きく違うのは「熱源」です。
レーザは「光」を熱源とし、集光した光が材料に「吸収」され熱エネルギーに変わる事で加工が成り立ちます。
しかしながらレーザ光が全て材料に吸収されるという訳ではなく、レーザ波長の違い、材料特性によってはレーザ光が吸収されず「反射」「透過」という現象が起こります。故にレーザ光の吸収率が低い銅などの高反射材料への加工は苦手としています。

一方電子ビームは「電子の運動エネルギー」を熱源とします。真空チャンバー内で電子に電圧を掛け、加速させた電子を対象物に衝突させる運動エネルギーが熱に変換されることで、対象物が過熱→溶融され、加工が成り立ちます。銅などの高反射材などに対しても運動エネルギーを熱源とする為、良好な加工が可能となります。

電子ビームの「強み」ご紹介!

電子ビーム加工は、レーザに負けず劣らずの高品質な溶接を実現することが可能です。
現場の方にインタビューし、電子ビームの強みについて色々と教えて貰うことが出来ました!今回はその中から代表的な強みをいくつかご紹介します。

①高反射材 銅・アルミへの高品質な溶接が可能!

銅やアルミは光を反射しやすいいわゆる「高反射材」と呼ばれる素材です。レーザでも最適な条件設定や、反射光対策を施すことで加工は可能ですが、溶接品質の確保に苦労を強いられるケースもあります。 しかしながら、電子ビームはどうでしょう?前述した通り電子ビームは電子の「運動エネルギー」を熱源とした加工です。その為、材料の反射率に左右されることのない、良好で高品質な溶接が可能です。

下写真は、銅・アルミに電子ビーム溶接とレーザ溶接でメルトランを実施した際のビードと断面写真です。
銅溶接をIRファイバーレーザ単体で実施した場合、レーザ光の吸収率が良くないため表面の溶接ビードに荒れが発生しております。
一方電子ビームでは、光の反射が発生せず、良好で綺麗な溶接ビードを引くことが出来ています。

また、アルミ材へのレーザ溶接で起きやすいブローホールの抑制にも、電子ビームは効果があります。
<銅>
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<純アルミ>
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②深い溶け込みを得られ、クラックも入りにくい!

冒頭でも説明いたしましたが、電子ビーム加工はレーザ加工と同じ「高エネルギービーム加工」。
局所的に高出力でビーム照射できる為、レーザに負けず劣らずの深い溶け込みを得られます。
更に電子ビームは真空チャンバー内で加工を行うので加工中は大気を遮断しており、大気の影響を受けません。
その為、溶融合金がすぐに固相となる「急冷」が発生せず、クラック(溶接割れ)が発生しにくくなります。
レーザではクラックが入ってしまう高炭素鋼の溶接も、電子ビームなら高品質な溶接が可能です。
<高炭素鋼 S50C>
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③電子ビームならではの特長「偏向」

そして最後は「偏向」と呼ばれる電子ビーム加工ならではの特長です。偏向とは、どのようなものでしょうか?
陰極から発生した電子は、陽極で電圧を掛けられることによって加速し、電子ビームとなります。
発生した電子ビームは装置内の収束コイルによって焦点位置(Z軸)を制御、偏向コイルによって照射位置(X,Y軸)を制御すること(下図赤枠部)で、ビームの当て方を自在に操ることができます。これが「偏向」です。
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電子ビーム加工ではこの「偏向」を使用することで、照射位置のコントロールはもちろんのこと、溶接品質の向上や加工時間(タクトタイム)の短縮といった効果が期待できます。
レーザ加工で例えるとするならば、ガルバノスキャナを使用した際と似たような効果を得られますが、ガルバノスキャナとは違う、偏向ならではの優位性があります。偏向について、もう少し詳しく紹介します。

偏向について、もっと詳しく!

続いて偏向の種類と効果について紹介します。

X軸、Y軸の2方向でビームを制御することにより、様々な方向にビームを照射することができます。
ビームの走査形状、幅やパワーをコントロールすることで、接合幅の調整、表面の仕上がり、クラック抑制等溶接品質向上が期待できます。
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主な偏向の種類、期待できる効果については上表のようになります。
その中でも面偏向による面照射、2ビーム分岐は、電子ビームならではの機能となっております!
今回は現場の方にお願いし、面偏向による面照射、2ビーム分岐照射を実際に見せてもらいました!
面偏向については、レーザのガルバノスキャナとの比較も見せてもらうことが出来ました!ご覧ください!


面偏向とレーザ加工(ガルバノスキャナ)の比較

2ビーム分岐照射


加工を見せてもらったところで、ふと疑問に思うことが出てきました。

「面偏向による面照射ができること、2ビームに分岐できることが特長だとは分かったけど、どうしてそんなことが出来るの?」

現場の方に投げかけてみたところ、疑問点に関してこう答えてもらいました。

電子ビームは電気信号によって制御されます。その為非常に速い速度での加工が実現可能となります。
実は面偏向による面照射も加工範囲を塗りつぶし加工しているのですが、電気信号により目にも止まらぬ速さで範囲内をビーム照射しています。その為あたかも面で一気に照射しているかのように見えているだけです。
また、2ビーム分岐も同様で、ほぼ同時にビームを分岐し照射しているように見える訳です。

なるほど!電子ビーム偏向は非常に高速なスピードで、誤差もなくほぼ同時に加工出来るということが分かりました。でも、どうしてこんな高速な加工が出来るのだろう?そして、偏向にはまだまだ色々なことができるらしい…?

…ということで、続編製作が決定しました! 次回は高速加工が可能な理由や、電子ビーム偏向の更なる機能が明らかに…!?
『レザルポ!』第3弾もご期待ください!

レーザだけじゃない!電子ビーム溶接を試せるレーザックス本社工場(愛知県知立市)

rupo_09.jpg 愛知県知立市のレーザックス本社工場では、今回ご紹介した電子ビーム溶接が可能な設備を保有しております。

「図面に電子ビーム溶接の指示があるがやってもらえるところがない!」

「レーザ溶接と電子ビーム溶接を試しに比べてみたい」

「これを溶接するには電子ビームかレーザ、どっちが良いの?」などなど…

いろいろなお問合せにも経験豊富なスタッフ・加工オペレーターがお客様の課題解決のお手伝いを致します。


◆◆◆レーザックスは1個の試作・テスト加工からでもOK、ぜひご相談ください。◆◆◆

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