航空宇宙
1960年に発明されたルビーレーザーの代表的実応用は、航空機エンジン用タービンブレードの冷却穴開けでした。エンジン効率向上には、動作温度を高める必要があり、使用材料の耐熱性向上とともに、ブレードの熱損傷防止用冷却構造が必須となる中、1970年に米GEがブレード表面上に冷却用気流膜を形成する一連の小穴加工を実現しました。 さらなるエンジン性能改善のための技術革新として、材料面ではニッケル基耐熱合金表面にTBC(サーマルバリアーコーティング)と呼ばれるセラミック溶射が施されています。穴加工形状も従来のストレート穴ではなく、シェイプドホールと呼ばれる漏斗(ろうと)状の特殊形状穴開けが行われています。 それに伴い、競合技術(ドリル、放電加工)では加工対応できず、レーザーによって製造可能な技術となってきています。生産性向上を目的として、レーザー発振器の進化に伴い、ルビーレーザーからネオジムYAGレーザーへ、さらにネオジムYAGレーザーからQCWファイバーレーザーへの置き換えが進みつつあります。 |
■レーザックスの航空宇宙分野での加工事例
【TBC材への孔あけ】
用途:燃焼器の保護パネル TBC(サーマルバリアーコーティング)を有する素材へのレーザー孔あけでは、ピアッシング(最初に貫通するまでの間)の際に素材表面へのドロスの付着があるとTBC効果に影響を及ぼします(写真上部)。 レーザックスでは独自のピアッシング方法で、TBCへのダメージの少ない孔あけ加工が可能です(写真下部)。 |
用途:タービンブレードの冷却孔など 冷却効率向上のために適用されるシェイプドホールと呼ばれる漏斗状の穴明け加工は従来、上面が長穴下面が丸穴が基本 でありました。 しかしながら近年では、より効率化を目指すため、上面側孔形状の自由度が必要となってきております。当社では上面を四角穴や台形穴など様々な形状での対応が可能です。 |
航空機に搭載されるジェットエンジンは燃料を燃焼させた高温ガスを噴射し推力を得ていますが、高温にさらされる部品を冷却する必要があり、多くは「空冷」の方式が取られています。 その為には高温部に使用される耐熱合金(Ni基やCo基合金)で作られた部品の表面に対し斜めに孔をあける必要が有り、現在これらの冷却孔は主にレーザーで加工されています。 ドリルのような工具では逃げてしまいますし、放電加工では時間が掛かってしまいますが、レーザーであれば非接触加工ですので斜めでも問題無く且つ高速に加工することが可能です。 レーザックスでは写真1のように素材表面より10°での孔あけも可能です。
ではこの斜め孔をあけることでどのように高温の部品を冷却しているのでしょう? ここではタービンに使用されるブレード(写真2)を例に説明させて頂きます。
ブレード内部には高温の燃焼ガスに比べ低温の空気が通る空洞があり、その空気が斜め孔を通してブレード外部へ流れ出て行きます。その際にブレード自体の熱を運び出すことでブレードを冷却しています。 ただ、これだけでは有りません。流れ出た空気はブレード外部を伝い連続的に流れて行くことで、外部からの熱を遮断する空気のシールドの役目も果たしているのです。 この様にレーザによりあけられた孔はジェットエンジンの安全な運用に寄与しています。
【曲面への孔あけ加工】
用途:燃焼器 航空機部品やガス・タービンブレード等「流体」に関わる器機部品は曲面が多く、又高温にさらされる為、冷却孔をあける必要があります。 その際、ドリル等接触加工で孔あけを行おうとすると、刃先が逃げてしまい加工は困難となりますが、非接触加工であるレーザ加工を用いれば曲面への加工が可能な上、孔の角度も遮蔽物・加工ヘッドの干渉が無い限り幅広くふる事ができます。 |
資料:様々なニーズにお応えするレーザジョブショップ.pdf
■AS9100、Nadcap認証取得 レーザックスでは航空宇宙産業に関する規格AS9100及び Nadcap(Non Conventional Machining)の認証取得をしており、品質要求の厳しい航空宇宙関連の製品でも安心してご依頼頂けます。