レーザ加工技術を知る

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レーザ加工Q&A Q1-3 レーザ光はどのようにして作られるのでしょうか。

レーザ光は先ほどQ1-1で述べたように自然界にない光で図5に示すように,

(1)レーザ発振の源となる物質であるレーザ媒質,(2)この媒質にエネルギーを与えるしくみの励起源,(3)さらに発生した光を増幅する鏡,の3つ要素から構成されています。また,レーザ媒質(1)によって使用する励起源(2)や発振するまでの過程が異なり,出力するレーザの波長も違ってきます。

fig1-5

表3 レーザの媒質及び励起源

表3 レーザの媒質及び励起源

代表的レーザの違いは表3に示すように半導体レーザ(LDレーザ)では半導体のp-n接合部を流れる電流が励起源となり,炭酸ガスレーザ,エキシマレーザ等のガスレーザではプラズマ 内の電子衝突(グロー放電,アーク放電など)を励起源としており,Nd:YAGレーザ,ディスクレーザ,ファイバーレーザ等の固体レーザでは光(ランプ,LDな ど)が励起源となります。

①原子構造について

あらゆる物質は原子からなりその組み合わせによって特有の物質が形成されますが,図6に 示すようにこの原子は正(+)電荷の原子核とこの周りのある負(-)電荷の電子で構成されています。そして各原子は決まった電子数を持っており,この電子 は電子殻と呼ばれる一定の軌道に沿って回っています。この電子殻は原子核に近い軌道からK殻,L殻,M殻と太陽の周りの惑星のように存在しており,各電子 殻に入れる最大電子数も決まっています。さらに各電子殻は固有のエネルギー準位Eを持っています。また最外殻の空いた電子殻が複数の原子核で共有して共有結合することで結晶が作られています。

さらに同図に示すように外部からエネルギーが与えられると電子はこれを吸収して外側の軌道へ移動して励起電子となる性質をもっていて,これを励起状態と呼んでいます。これはレーザ光の発振には欠かせない現象です。

また,外部からより強いエネルギーを与えると原子核を振り切って電子が飛び出す電離状態になりますが,この電子は自由電子と呼ばれ,これを積極的に利用したのが電子ビーム溶接です。

fig1-6

②レーザ光の発生

電子が一番内側の軌道を回る状態は同図に示すように基底状態と呼び,このエネルギー準位は基底準位E0です。励起されたエネルギー準位は励起準位Enと呼ばれ,同図に示すE1,E2,E3,…となり外側の励起準位ほど高くなります。光は図7(a)に示すように上位レベルE2の電子が下位レベルE1の励起準位に移るときに放出されます。その光の周波数(振動数)νは2つのエネルギー準位の差で決まり次式で示されます。

ν=(E2-E1)/h

hはプランクの常数(h=6.62×10-34J・s)です。

この光の放出は自然放出と呼ばれ,光の方向や位相がばらばらなインコヒーレントな光です。また同図(b)の光の吸収による励起を繰り返す現象は身の回りにある蛍光灯,水銀灯,ナトリウムランプなどに利用されてます。

fig1-7

では,レーザ光が発振する仕掛けは何かと言うと同図(c)に示すように励起準位E2に励起電子がいるとき周波数νの火種となる光が入ってくると,励起準位E2よりE1に 励起電子が遷移すると同時に波長νの光が誘導されて発生します。この光は火種の光と周波数ν,位相,方向,偏光性質がまったく同じコピーです。したがって 火種の光と誘導されて発生した光の波が重なり合って振幅が2倍,すなわち強い光となり入射光は増幅されたことになります。

ただしこの現象が持続するためには励起準位E2>E1,すなわち反転分布の状態であること必要であり,そのために励起源(図5)が使用されます。この励起源は励起準位E2を狙って選択的に励起しておりポンピング作用と言われています。

③レーザ光の発振

反転分布の状態から誘導放出によってレーザ光は強くなりますが,この現象をより強力にするために鏡の性質が利用されます。レーザ発振のプロセスを図8にまとめ纏めて示します。

(a)レーザ媒質が安定なときの状態です

(b)励起源より光励起を受けて反転分布を作っている

(c)周波数νの自然放出光が発生している

(d)その内,媒質の中を鏡の方向に向かったものは反射され,鏡の間を何度も往復する事で非常に高い強度に増幅されてます

(e)片側の鏡を部分透過にすると,増幅された光の一部がレーザ光として放出されます

fig1-8

この鏡の間で光を共振させて増幅させるので共振器と呼ばれ,さまざまな種類があります。安定型共振器の場合は往復する光を光軸付近で閉じ込めるようにしていますが,代表的なものに図9に示すような(a)平行平面型,(b)共焦点型,(c)共心型,(d)半共心型,などがあります。いずれにしても鏡の間で光が往復するためには波の節の位置で反射させる必要があり,そのために鏡の間隔は正確に半波長の整数倍に設定されています。

また,光を取りだす部分透過鏡(半透過鏡)は連続した光を取りだすために媒質中の増幅率に見合った透過率に設計されています。すなわち透過率が高いと共心増幅が維持されずレーザ光が出力できなくなり,反面透過率が低いとレーザ光が取りだせず出力が下がってしまいます。

fig1-9

「溶接技術」 2005年5月号~9月号 掲載 荒谷 雄 著

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