レーザ加工技術を知る

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レーザ加工Q&A Q1-2 レーザ光が持っている性質はどのようなものでしょうか。

光は電磁波でエネルギーを持っていますが,例えば太陽光のエネルギーをレンズで集めると図1(a)に示すように新聞紙に火をつけることができます。また近年ではこのクリーンなエネルギーを電気に変換したり,表面活性素材を用いて空気を洗浄するエネルギー源などに利用されています。過去には宇宙衛星軌道に巨大なレンズをおいて,地球に光を集光させて溶接に使う構想も見かけました。しかし,太陽光は電磁波の振動周波数や振動方向,および振動の位相がばらばらなためレンズの光学系で集めるには限度があります。

一方,図1(b)に示すレーザ光では電磁波の振動数や振動方向および位相が揃っているため光エネルギーが集中して高いエネルギー密度となり,鉄板をも溶融することができるようになります。

fig1-1

次に代表的な光の性質を4つ紹介します。

①    高エネルギー密度に集光できる

レンズによる集光光学系は図2に示すように焦点径dは次式で表されます。

fig1-2

d=2.44×f・λ/D

ここでDは集光レンズに入る光の径,fはレンズの焦点距離,λは光の波長です。例えばNd:YAGレーザではf=150mm,D=20mm,λ=1.06μmとすると,集光径d=20μmとなります。CO2レーザはλ=10.6μmですので同じレンズ系では集光系が10倍の200μmになります。したがって,先の表1に示したように波長の異なるレーザが色々ありますが,波長の短いほど焦点径dは小さくなります。

また,参考までに溶接で使われる種々の熱源とレーザ光をパワー密度で比較した結果を表2に示しました。レーザのパワー密度は従来のガスバーナ,アーク,プラズマなどに比べて非常に高く,電子ビームとほぼ同じであり,高密度エネルギーと呼ばれています。

表2 各種材料加工用熱源のパワー密度

table2

①    単波長である

先の表1に示したようにCO2レーザは10.6μm,Nd:YAGレーザは1.06μmと単一の波長で,その誤差も数Åと少ない。一方,自然光はプリズムを通してみると図3(a)に示すように分光されて虹の7色に見えるのは波長によって屈折率が違うためです。なお,レーザ光の場合は同図(b)のように単波長なので分光されず同じ光が見られます。

fig1-3

①    直進する

レーザは発振した光は優れた指向性を持っており,ほとんど広がらずに直進します。ビームの品質は広がり角によって評価されますが,もっとも優れている場合はM2=1で,この時の広がり角Δθ(回折限界の広がり角)は波長をλ(μm),ビーム径をD(m)とすると次式で表されます。

Δθ=1.33×λ/D

ここで,波長の短いNd:YAGレーザでは波長λが1.06μmなのでビーム径を50cmにして月に照らすと月までの距離を38万kmとして,ビームの広がりは僅か1kmとなります。この性質を利用してアポロ11号では月面に反射鏡を立ててレーザ光を月面に照射して地球から月までの距離を1m以下の誤差で測定しています。したがってレーザ光は長距離伝送が可能で,工場のレイアウト設計の自由度が高くなります。

④コヒーレントである

自然光は波長や位相がばらばら,すなわちインコヒーレント(非干渉性)であるために図4(a)に示すように合成した光はランダムな波形になります。

一方,レーザ光は同図(b)に示すように単波長で位相も揃っているので,合成すると波の山と山が重ね合わされて強められます。このような波をコヒーレント(可干渉性)な波と言います。もし,波の位相が180度ずれて山と谷が一致すると光は弱ってしまいます。

このコヒーレントの性質は後に説明するレーザ光の誘導過程で,1個の光量子が同じ位相と波長を持つ光を誘導放出するために得られます。

fig1-4

「溶接技術」 2005年5月号~9月号 掲載 荒谷 雄 著

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