レーザ加工技術を知る

レーザ加工技術を知る

化学修飾による木材への機能性付与を目的とした レーザマイクロインサイジング

第88回レーザ加工学会講演論文集(2017.10)

化学修飾による木材への機能性付与を目的としたレーザマイクロインサイジング

Laser Micro Incising for Adding Functionality to Wood by Chemical Modification

福田聡史*, 野村昌樹*, 若林浩次**
*あいち産業科学技術総合センター 産業技術センター
(〒448-0013 愛知県刈谷市恩田町1 丁目157 番地1)
**株式会社レーザックス レーザテクニカルセンター
(〒223-0057 神奈川県横浜市港北区新羽町1199-1)

Satoshi FUKUTA*, Masaki NOMURA*, Koji WAKABAYASHI**
*Industrial Research Center, Aichi Center for Industry and Science Technology
(1-157-1 Onda-Cho, Kariya, Aichi 448-0013, Japan)
E-mail: fukuta@aichi-inst.jp
**Laser Technical Center, LASERX Co., LTD.
(1199-1 Nippa-Cho, Kouhoku-Ku, Yokohama-Shi, Kanagawa 223-0057, Japan)

 

 木材の表面の化学修飾を目的として,短パルスレーザによる木材の穴開け加工を実施した.この穴を通して処理剤の浸透を促し,表層のみを選択的に改質することを目的としている.短パルスレーザの利点は,加工痕が目視で認識されにくいため,木材の表面の風合いを損なうことなく極めて多くの穴開けを行うことができる点である.その結果,均質で効果的な処理を簡便に施すことが可能となった.レーザは,固体レーザの第3高調波が加工効率の観点から最適の波長であり,ナノ秒パルスレーザにより直径50 μmで深さ数ミリを超える穴開け加工が可能であった.本報ではこの微細加工の概要ととともに,現在展開している木材の表面処理の現状について紹介する.また,レーザ加工の高速化を目的として得られた最近の知見を通して,工業的な展開の可能性について考察した.

 For the chemical modification of wood surface, short-pulse laser drilling of wood was carried out. The purpose of this drilling is to promote penetration of the treatment agent through the holes and to modify selectively only the surface layer. The advantage of this laser is that it is difficult to recognize machining marks visually, so that it is possible to perform a lot of holes without impairing the texture of wood. As a result, homogeneous and effective treatment could be performed easily. From the evaluation of processing efficiency, the third harmonic generation of solid state laser was the optimum wavelength, and it was possible to perforate with a diameter of 50 μm and a depth exceeding several millimeters by the nanosecond-pulse laser. This report introduces the outline of this microfabrication and the chemical modification of wood surface currently being developed. In addition, from the recent knowledge obtained for the purpose of high-speed processing, the possibility of industrial development was discussed.

Key words: wood, chemical modification, laser micro incising

1. 木材の化学修飾

 木材の化学修飾(または化学加工,化学処理)とは,木材の内部へ特定の化学種を導入し,木材の成分と反応させることで改質や機能付与を施す操作である.一例として,セルロースの持つ水酸基をエステル化(無水酢酸を適用すればアセチル化)することによって,高い寸法安定性と防腐性能を有する材料が開発,市販されている.広義には木材の成分との化学反応を伴わない,細胞空隙への処理剤の充填による機能向上も含まれ,難燃剤の導入による難燃化処理や,樹脂の充填による物理的性質の向上なども含まれる(樹脂の種類によっては木材成分との化学反応を伴う場合もある).しかしながら,木材中にこれら処理剤を均質に含浸させることが困難なことが,木材の化学加工が普及しない理由の一つとなっている.木材中への液体の浸透は専ら木口面(繊維断面)が支配的で,繊維方向に対して垂直方向からの浸透量は極めて少ない.これは,木材が樹木として成長する過程で,繊維方向に水分の導通を行っているためである.しかし,液体の導通を担っていた仮導管(導管)も,伐採後の乾燥を経てその性質が損なわれ,液体の浸潤が困難になってしまう.それに抗い処理剤を木材中に含浸させるために,一般的には圧力容器を用いた減圧・加圧法を用いる.つまり,減圧操作により木材内部を脱気した後に,処理剤を加圧することで内部に浸透を促す方法で,処理には長い時間を要する.含浸後の木材は乾燥を経て完成する.この一連の処理に手間と時間を要することも化学修飾の普及を妨げている要因の一つである.樹種や部位によっては,この過程を経ても均質で十分な浸潤が得られないため,試料に予めインサイジング加工を施す.インサイジングとは”切り込み(incision)”に由来する用語で,木材の表面に切り込みを入れ,繊維方向に部分的に切断することで木口面を現し,そこからの液体の浸透を図るものである.木製の枕木や住宅の土台材の表面には,金属刃の圧入によって設けられた規則的な傷を持つものも見受けられる.これがインサイジングであり,防腐剤の浸透が上記の方法でなされている.このインサイジングに対して,レーザによる穴開け加工は極めて有効な手段として実は古くから検討されてきた.

2. CO₂レーザによる既往の研究

 金属刃の圧入と比較し,レーザによる穴開け加工によれば,含浸処理において極めて深い浸潤が得られる割に,材料の強度の低下は少ない.1960 年のメイマンによるレーザの発振から間もない1963 年に,Bryan はルビーレーザによる木材の穴開け加工を具体的に報告しており(1),既に「kerfless sawing」を科学の進歩の先に見据えている.1970 年代以降,CO₂レーザの発展に伴い,木材に対する様々な加工情報が報告される中,Simpson がレーザインサイジングの概念を提案している(2)が,これは木材の乾燥時間の短縮を目的としたものであった.その後,防腐処理を目的に,含浸処理の前処理として検討されることとなる.高出力化が進むに伴い,安藤や服部らは深さ90 mm近いインサイジング(3)や円柱材の周囲へのインサイジング加工(4)など,レーザならではの用途を提案するとともに,樹脂含浸処理による高耐久化処理を施し,屋外暴露試験を目的に校内のベンチを試作している.しかし未だこれらの技術は普及していない.その理由は,装置の値段(相対する加工物の付加価値が低いこと),加工速度が遅いこと,加工痕が目立つため用途が限定されることなどが挙げられる.

3. レーザマイクロインサイジング

 それに対し我々は,短波長・短パルスのレーザを応用した微細な穴開け加工,すなわちレーザマイクロインサイジングを提案してきた(5).その最大の利点は,加工痕が目視で認識されにくいため,木材の表面の風合いが損なわれないことである.そのため極めて多くの穴開けを行うこともできる.一例として図1に加工例を示す.表面(図1(a))の点線内には667 holes/cm2の密度で穴が開けられているが目視では識別できない.入射面における孔の直径は約50μm である.別途異なる試料でその断面を観察した結果(図1(b)),極めてアスペクト比の高い穴開け加工が可能であることがわかった.

図の1

 これにより通常では液体の浸透が得られない繊維方向に対する垂直面,つまり木材の表面からの含浸処理が可能となった.加工穴から浸透した処理剤は仮導管の内腔に浸透し,繊維方向に浸潤を得ることができる.穴の密度が高い条件では,圧力容器を用いること無く簡便な刷毛塗りによって表層への処理が可能となった.表面硬度の向上や,着炎,延焼を遅延する防炎処理など,表面のみの物性改善が必要な場合などでは,圧力容器を使用した方法と比べて合理的である.つまり,木材の表層のみを選択的に,化学修飾により機能を付与するための手段として,短波長・短パルスレーザの活用を検討してきた.

4. 加工の波長依存性

 木材表面のクリーニングやアブレーションに対するUV レーザの適用報告は散見されるものの,切断・穴開け等の加工に対し,Nd:YVO4(Nd:YAG)レーザ(波長:1064 nm)以下の波長における検討例は見当たらず知見がない.そこで,同一出力,同一発振周波数のもと, 切断加工において,加工深さを加工効率の指標とし,波長毎に加工深さを比較することでその波長依存性を調査した.具体的には出力5 W でNd:YVO4の基本波長1064 nm とその第2,第3高調波を比較した.図2に一例としてカラマツ材(早材部)の送り速度と切込み深さの関係を示す.波長1064 nmは出力5 W では加工できず12 W としたが,125, 250 mm/sec では加工できず,第3高調波の355 nm が最適であった.波長変換時の損失により355 nmの発振効率は1064, 532 nmよりも劣るものの,それを考慮しても優位にあると考えられる.また,図2中の加工条件a, b における加工断面の写真を図3に示す.355nm(図3(a))では熱影響が目立たないのに対し532 nm(図3(b))では熱影響は顕著で,加工深さも不安定であった.なお,同様に出力2 W で第3,第4高調波を比較したところ,第3高調波での加工深さは第4高調波の場合の2~3倍で,第3高調波が優れていた(6).

図②

 この波長による加工効率の相違を木材の光の吸収の違いによるものと推察し,各種素材の分光反射率を測定した結果を図4に示す.木材としてスギおよびカラマツ材を示したが,この傾向は樹種によらず概ね同じであった.光の反射が少なく吸収の多い波長ほど加工効率に優れており,推察に合致した.木材における波長355 nm 付近の紫外線の吸収は,木材の構成成分で約30 %を占める,高分子のフェノール性化合物であるリグニン(lignin)に由来する(7).

図③

図④

図⑤

 そこで,加工における波長355 nm の優位性をリグニンの存在によるものと推察した.木材のリグニン以外の構成成分は,ほぼセルロースとヘミセルロースであることから,リグニンを含まずセルロースから構成されるコットンによりボード(セルロースボード)を成形し,分光反射率の測定と,波長355nm による同様の加工を行った.分光反射率は図4に併記したとおり,可視から紫外領域まで木材よりも高くなっており,加工の結果は図5(a)に示すとおり,25 mm/sec でも加工はできず,5 mm/sec に速度を下げても加工深さは1 mm 程度で,加工形態も目視であっても熱影響が顕著な加工であった.これは,同等の密度でリグニンを含んだままの中密度繊維板MDF(medium density fiberboard)の加工形態(図5(b)の楕円内部)とは大きく異なった.MDF の分光反射率は図4に併記したとおり,紫外から近赤外領域まで木材よりも全体に低い傾向であったが,紫外領域の吸収は顕著である.つまり,リグニンが紫外光を吸収するため,UV レーザを用いることで効率良く微細な加工が可能になったと考察しており,木質材料の微細加工には第3高調波の波長355 nm を推奨している.

5. レーザマイクロインサイジングの応用展開

 現在実施・検討されているレーザマイクロインサイジングの活用事例を3つ紹介する.これらは加工の特徴からも3つに分類している.

 5.1 減圧・加圧含浸処理を併用した難燃処理

 一つは,前述の減圧・加圧含浸処理と併用し,含浸処理における不均質さの改善や処理時間の短縮化を狙うものである.現在,国産材の積極的な活用を目的に,建築構造や内装への木材の適用が積極的に進められているが,消防法の関係から特定の部位には難燃性能を付与した木材が適用されている.要求される高い基準を満足するために減圧・加圧含浸処理により全体が処理されているものの,樹種や部位により不均質さが生じるため,基準を満足できないことで歩留まりの低下を招いている.それに対し,美観が要求される内装用途に有効な手段が,このレーザマイクロインサイジングである.耐火性が特に必要な表面において,処理剤の均質な浸透が得られるため,大きな材料であっても安定した性能を得ることができ,結果的に適用する処理剤の量を減らすことも可能となる.美観を気にしない裏面からはCO₂ レーザを併用し深さを稼ぐといった考案もみられる.この様な用途では4~5 mm程度の加工深さが要求されるものの,減圧・加圧含浸処理を併用するため穴の数は多くても10 holes/cm2個程度で十分であると考えられ,後述する現状の加工速度であっても利用価値は高く,現在最も関心が高い.

 5.2 レーザブラストによる塗膜の耐久性の向上

 現在まだ可能性検討の段階にある.木材の塗膜の屋外耐久性は端的には塗布量に依存するとされており,ラフソーン(粗挽き)面への塗装面には耐久性の向上が認められている.そこで,屋外塗装の補修には古い塗膜の除去だけでなく,その後の塗布量の増大を目的にクルミの殻の研磨材を用いたブラスト処理が実施される例もある.現在,レーザによる穴開けによって塗料の浸透深さを数十から数百μm で調製し,評価を実施している.現状,現場施工には対応できないものの美観や触感が損なわれず,品質の観点から均質かつ条件の制御ができるため,建材をはじめ家具などへの適用も期待できる.この加工の場合,穴の深さが浅いため,ガルバノスキャナの走査を止めることなくレーザを発振して加工することで短時間に処理できる.処理条件は,走査線数とスキャン速度,繰返し発振周波数の関係で決定される.スキャナの繰返し位置決め精度が優れるため,穴の深さは同じルーチンの繰返し数によって定まる.因みに,現状スギ材に対して1 パルスで約50 μmの加工深さが得られている.獲得できる性能次第では現状の加工速度であっても一定の利用価値があると考えられる.また,スキャナの速度次第で飛躍的な処理時間の短縮も期待できる.

 5.3 塗布含浸による表面硬度の向上

 表層からの樹脂の含浸により細胞内腔を充填させることで物性の向上が可能となる.空隙が多いつまり密度が

図⑥

低く強度の低い材料ほど樹脂の充填量は多くなるため,その効果は顕著である.国産材のスギ材は軟質で用途が限定的であるため,その活用を拡げる手段として関心は高い.図6に,表面に樹脂として塗料を浸透させた一例を示した.浸透の形態やその深さがはっきり分かるため塗料を適用したが,表面硬度や耐衝撃性は数倍に向上した.充填性の高い樹脂を用いた場合,さらなる強度の向上が見られた.これらの場合,穴の深さは要求物性に応じて数mm,個数は平方センチあたり数百個必要である.そのため,加工時間は5.1 項や5.2 項よりも長くなることが課題である.

6. 加工速度の向上に向けた検討

 6.1 照射時間と穴の深さ

 これらの試みでは,加工速度の向上(加工時間の短縮)が技術的に最も大きな課題である.現状の加工速度の一例としてスギ材の早材部分(年輪でない部分)に穴開け加工を実施した場合の照射時間と穴の深さの関係を図7に示す.例えば,5.3 項の処理を目的に深さ3 mmの穴を500 holes/cm2開ける場合,ガルバノスキャナを使用しても約286 min/m2必要である(照射時間だけでも計83 min だが,ミラーの移動時間を要する).

図⑦

表1それを解決するとともに,木材に対する加工特性の全容を明らかにするため,各種のレーザ加工パラメータが加工効率に及ぼす影響を調査している.その一端として,穴開け加工の加工効率に及ぼすレーザのパルス繰返し周波数(以下,周波数)の影響を調べた結果を紹介する.

 6.2 パルス繰返し周波数の影響

 6.1 項と同様の加工を実施し,周波数を変えて穴の加工深さへの影響を調べた.その発振条件を表1に示す.すなわち,パルスエネルギー(以下PE)を60 μJと200 μJの2水準とし,1穴に投入するエネルギーを18 mJ に統一し,周波数を変化させた.図8にスギ材を加工した時のパルス繰返し周波数と穴の深さの関係を示した.その結果,PE 60 μJとPE200 μJでは異なる傾向を示した.PE 60 μJでは,穴の深さは周波数依存性を示し,本加工が非加熱加工だけでなく熱加工であることが示唆された.周波数約50 kHz をピークに穴の深さが浅くなる理由は,逆制動放射によるレーザの減衰と予想された.しかしPE 200 μJ では,低い周波数においても深い穴の深さが得られた.この加工に対して200 μJのパルスは十分な作用を及ぼすことができたと考えられる.そのため,穴の深さが極大となる周波数は10 kHzと,PE 60 μJ の場合よりも低くなったと考えられる.加工形態にも違いが生じ,周波数10 kHz 以上では加工断面に燃焼層が観察された.余剰の熱量はプラズマ吸収以外に費やされているとも考えられる.しかしながら,実際のインサイジング加工における加工速度は周波数に依存するため,低い周波数の適用は非効率である

図⑧

図⑨

 6.3 照射方法の検討

 この結果に基づき2通りの加工方法でインサイジジングを実施した.その模式図を図9に示す.図9(a) の集中照射法(Concentrated irradiation method)は5.1 項や5.3 項で実施している方法で,ここでは1穴毎にPE 240 μJ のレーザを,周波数40 kHz にて各穴に2 ms 発振した.従って1穴につき80 パスルである.穴数と間隔は100 個,0.1 mmとした.図9(b)の分散照射法(Dispersed irradiation method)は,レーザを発振しつつガルバノスキャナを穴毎に止めることなくスキャンする方法である.ここではミラーによるスキャン速度を4 m/sec とし,周波数を40 kHz とすることで穴の間隔を0.1 mm とした.パターンを80 回繰返すことで1穴毎のパルス数を図9(a)の集中照射法と同じくした.PE も240 μJ とした.1穴に対する実質の周波数は約0.4 kHz に相当する.つまり,一定以上のPE では図9(b)の様に分散的に照射しても集中照射法と同等の加工深さが得られると予測した.

図⑩

 その結果として,はじめに図10 に加工形態(表面と断面)を示す.図10(a)の集中照射法では断面や入射口に燃焼層が観察され,入射口径は約90 μmと大きくなった.一方,図10(b)の分散照射法では,断面や入射口には燃焼層は目立たなかった.ガルバノスキャナの位置決め精度も正確で,繰返しによる穴の位置の誤差は生じなかった.また,穴の深さは集中照射法と同等であった.さらに,5.3 項と同様に樹脂の浸透性を比較したところ,その浸透量は同等であった.従って,粗穴からある一定の穴の密度までは集中照射法が有効と言えるが,穴の密度が高くなるに従い分散照射法によりガルバノスキャナが持つ速い走査速度が発揮できることが分かった.繰返し位置決め精度などの課題が残るものの,例えば200 m/s の高速スキャンが可能なポリゴンスキャナを使用することで,加工痕の目立たないより精緻な加工を数十倍の速度で実施できる可能性が示された.

 6.4 穴の深さに及ぼす照射方法の影響

 次に,それぞれの照射方法が穴の深さに及ぼす影響について調べた.6.3 項の加工条件のもと,1穴に投入するエネルギーと穴の深さの関係を調べた結果を図11 に示す.集中照射法では投入エネルギーに応じて穴の深さが増加するのに対して,分散照射法では一定の深さに漸近した.つまり,一定の深さまでならば周波数に依存しないものの,一定以上の加工深さを得る場合には,加工深さは周波数に依存し,集中的な熱の投入が必要であると推察された.

 一定の穴の深さを要し,なおかつ多穴加工が必要な5.3 項のような応用であっても,現状必要な加工深さは5 mm 未満であるため,分散照射法は有効な加工手段であると考えられる.つまり,現状加工速度が課題となっている5.3 項の様な応用であっても,高速のスキャナを用いた分散照射法により,熱影響のより少ない加工を高速で実施できることが期待される.また,5.2 項の応用例に対しては,さらなる高速化による生産性の向上が期待できる.一方,5.1項の様な応用例では,熱影響は大きくなるもの,集中照射法により,さらなる加工深さを得ることができる.図⑪7. まとめ

(1) 木材の加工に対してこれまで適用されてきたCO₂ レーザに対し,固体レーザの短波長レーザによる微細加工を検討した.

(2) 適用するレーザの波長は,固体レーザの第3高調波である波長355 nmが最適であった.

(3) 微細な穴開け加工であるレーザマイクロインサイジングを活用し,各種処理剤の含浸処理を施すことで木材の表層の化学修飾を施す3つの事例を紹介した.

(4) ガルバノスキャナを使用した穴開け加工において,2通りの加工方法(集中照射法と分散照射法)を検討した 結果,高速スキャナを活用することにより,特に多穴加工が求められる応用において,加工時間を飛躍的に 短縮できる可能性が示された.

(5) 周波数の影響を調べた結果,その背後にある木材の加工特性の一端を理解することができた.

(6) 建材,家具等の木製品の性能・品質向上に向けた新しいアプローチとして,レーザマイクロインサイジングを応用した化学修飾の早期の応用展開が望まれる.

謝 辞

本研究の一部は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「マッチングプランナープログラム」の支援によって行われた.

参 考 文 献

(1) Bryan, E. L.: Machining Wood with Light, Forest Prod. J., 13-1, (1963), 14.

(2) Simpson, W. T.: Laser Incising to Increase Drying Rate of Wood, Wood Fiber Sci., 19-1, (1987), 9.

(3) 安藤恵介, 中村彰, 服部順昭, 喜多山繁: 木材のレーザインサイジング-柱材への防腐薬剤の注入-, 木材工業, 48-7, (1993), 314.

(4) 服部順昭, 安藤恵介, 喜多山繁, 中村嘉明: 木材のレーザインサイジング-円柱材への水溶性染料の注入-, 木材学会誌, 40-12, (1994), 381.

(5) S. Fukuta, M. Nomura, T. Ikeda, M. Yoshizawa, M. Yamasaki, Y. Sasaki.: UV laser machining of wood, Euro J of Wood and Wood Prod., 4-2, (2016), 261.

(6) S. Fukuta, M. Nomura, T. Ikeda, M. Yoshizawa, MYamasaki, Y. Sasaki.: Wavelength dependence of machining performance in UV-, VIS- and NIR-laser cutting of wood, J of Wood Sci., 62-4, (2016), 316.

(7) 安田征市, 長岡宗男, 半澤道郎: パルプの光による変色, 北海道大学農学部演習林研究報告, 31-1, (1974), 1.

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